06/03/2021
【KUMHO ECSTA V720 長期レビュー(文面も長いです😅)】
筆:山田 遼(フラム・ブルー代表)
車両:マツダ ロードスター(NB8C)
期間:2020年9月〜2021年3月
サイズ:195/55 R15
昨年9月の頭よりフラム・ブルー代表 山田の愛車兼当社テスト用車両であるNBロードスターに「KUMHO ECSTA V720」を装着させていただき、公道からサーキットまで様々な条件下で感触を確かめてきました。
当社で取り扱う製品としては「山田自身が実際に使用して良いと思ったものをお客様におすすめする」というポリシーのもと、メリットもデメリットも正直に余すことなくレビューいたします。
走行距離は半年にして5000km強。お仕事での移動や休日のドライブなど公道での走行がメインではありますが、平均して月に1度のペースでコンスタントにサーキット走行も行ってきました。
まず一般道を少し転がしただけで、その剛性感の高さと路面からのインフォメーションを伝える能力の高さを感じます。分かりやすいところで言えば、ステアリングに伝わってくる路面からの振動は細かく時に大きく、アンジュレーションやギャップへの反応がシビアになります。巷でよく聞くような悪い言いかえだと「ステアリングが路面に対してとられやすくなる」となりますが、私からすれば一般道の低速域でここまで路面からのインフォメーションを吸い上げてドライバーに伝えてくれたスポーツタイヤには今まで出会ったことが無く、非常に好印象でした。ドライバー操作による加減速時の縦Gにも細かく反応します。
高速道へと車を走らせ高速域で負荷をかけてみると、モータースポーツシーンから市販タイヤであるこのV720へいかにして技術がフィードバックされ作り上げられたのかを感じることが出来ました。特に一般道で感じた剛性感の高さは高速道ではより一層際立ち、ハイスピードなコーナリングで横Gが大きくかかってもサイドウォール部やショルダー部がよれて不安を感じることが一切ありません。それは9月初旬のまるで真夏のような暑さの下でも、真冬の夜の冷え切った路面でも変わりません。
そして普段使いもするということで、スポーツタイヤであっても当然ウェット路面での安全性が欲しいところ。V720に履き替える前はそれよりも更に溝が多く切ってある、いかにも排水性の良さそうなパターンの他社製スポーツタイヤを新品状態から装着していましたが、ハイトの高い(減っていない)状態でも豪雨下の路面には対応し切れず、時に60km/hを下回る速度域でハイドロプレーニングを起こしたことがありました。V720は一見するとブロックが大きく排水性が高く無いように見えてしまいますが、溝の形状と配置、そしてコンパウンドの作動温度レンジの広さからか、豪雨での高速走行時でも操作自体が的確であれば不安定な動きを覗かせることも、ましてハイドロプレーニングを起こすことも無く、スポーツタイヤとしてはウェットグリップも満足出来ました。
スポーツラジアルタイヤである以上、もちろん公道で走らせても安全性が担保されているべきですが、何よりもサーキットでの性能が最優先。私はお客様の大切なお車を限界付近で走らせることを生業としているので、「その方々の想いや立場を追体験することも重要」との考えから、自らの愛車であるNBロードスターをスポーツ走行可能な状態に仕立てて月に一度程度は自己研鑽のためにサーキットを走らせています。そこでもV720からは高いポテンシャルを感じました。
サーキットを走らせる、という場面において、一発のタイムアタックのみの用途で無ければ、
・縦、横方向のグリップバランスの良さ
・走り出しのコールド状態から表面に熱が入り切った後の連続周回までの安定したグリップ
・新品状態から熱入れ、冷却のサイクルを繰り返しても特性が変化したり劣化したりしない
・安価で導入出来、1セットでもローテーションすれば長く使える=高コストパフォーマンス
これらのポイントを総合的にクリアした物が、結果として良いスポーツラジアルタイヤであると、私は考えています。この「良い」については人それぞれかと思います。
仕事柄、今まで日本製から海外製まで様々なスポーツラジアルタイヤを実際に使わせていただきましたが、上記のポイントひとつだけに秀でていたり、総合的に良いかと思われたものの最後に挙げた「耐久性・コストパフォーマンス」に劣っていたりと、私の考える「良い」ものに出会うことはそう多くありません。中には「完璧!」と思うタイヤもあるのですが、よく考えるとコストがそれに見合わないのが常です。
結果から言えば、V720は上記全てのポイントを総合的にクリアした「良い」スポーツラジアルタイヤです。
正直、一発のグリップの高さ(=1LAP狙いでアタックした時のタイムの良さ)は他社製の物に劣ると感じる部分もありますが、縦・横のグリップバランスの良さや低温域から高温域までの安定したフィーリング、そして日数を置いてスポーツ走行しても変わらぬ特性、それらを低価格帯で全て実現しているのはこのV720だけでは無いかとさえ感じます。一般道で感じた「走る・止まる・曲がる」の基本特性の高さはサーキットへとステージを変えるとより際立ち、縦・横グリップバランスの良さは車のセットアップのしやすさにも繋がっています。
特筆すべきは連続周回時の「熱ダレ」の少なさで、温間エア圧が適正なところであれば、1km弱のミニサーキットを10LAP連続周回してもコンマ1秒程度のタイム落ちで済むことが分かっています。当然、タイムとしてこのように結果が現れるのですから、フィーリングの悪化もほとんどありません。ただし、他のユーザー様からは「エア圧が高すぎると途端に熱ダレが激しくなる」という声もお聞きしましたので、その点には気を遣ってタイヤにグレイニング(ささくれ)が発生しない程度の適正温間エア圧をしっかりと把握し、冷間空気圧をセットする必要があります。
このV720では公道、サーキット両方で、最初に記した通り合計5000km強を走行しましたが、残り溝はようやく5分山を切ったか、といったところ。ただし、定期的な表面チェックとローテーションを行って、ということが前提にあります。同様のスポーツラジアルタイヤと比べると驚異的な保ちで、コストパフォーマンスは非常に高いレベルにあると言えます。
総じて、スポーツラジアルタイヤとしてはお世辞抜きで好感触です。私として、お客様におすすめするにはほぼ不足はありません。
ただ一つ、このタイヤのマイナス面での特徴があるとすれば、「ロードノイズが非常に大きく独特なこと」です。60km/hまでの比較的な低速域では「ゴー」という低いノイズ、それより高い速度域においては「ウィンウィンウィン...」という高く独特なノイズを発生させます。
サーキットでの走行がメインの方、公道でもサーキットでも「いっぱい走らせても長持ちするタイヤ」をお求めの方、そんな方々にはロードノイズなんて関係無いと思います。ただ公道での使用がメインでスポーツ走行はほとんどされない方もいらっしゃるかと思いますので、念のため、記しておきました。※
長くなりましたが、このECSTA V720ほか、KUMHO製品はフラム・ブルーで取り扱っておりますので、タイヤのご相談もぜひ当社まで!!
※街乗りメインだけどスポーティーなタイヤが欲しい、という方には「ECSTA PS&HS」シリーズをおすすめします。こちらはコンフォートタイヤ等と比べてもロードノイズが同等レベルで少なく、剛性感の高いスポーティーラインらしい走りも楽しめます。